JOURNAL

東京モード学園との産学連携プロジェクトにて 「ファッション×SDGs」をテーマに特別講義を実施

ファッション業界の未来を担う若者たちに、「SDGs」についての理解を深めてほしい。そんな思いから、2021年10月20日、東京モード学園の総合校舎コクーンタワーにて当社による特別講義を実施。ファッション業界は現在、どんな課題を抱えているのか。それに対して、各企業はどんな取り組みを始めているのか。国内外のアパレルブランドと数多くの取り引きを行っている当社ならではの情報をもとに、ファッションビジネスの今とこれからについてお話しさせていただきました。今回はその講義の内容をご紹介します。

華やかな表向きの一方で多くの課題を抱える業界の現実

今回の特別講義に参加してくださったのは、東京モード学園のファッションビジネス学科とスタイリスト学科の学生の皆さん。当社の牛尾による「ファッション×SDGs」をテーマにした講義からスタートしました。
「SDGsの浸透具合がまだ浅い日本国内。一方、外資系ラグジュアリーブランドとの取り引きを多く持つ弊社の場合、会社として環境への取り組みをどのように行っているのか、社員の男女比率はどうか、どういったガバナンスで会社を運営しているか、といった質問を投げかけられるシーンは当たり前のようにあります。SDGsを“誰かが遠くで話している地球にとって大切な話し”としてではなく、個人が当たり前に気にかけていることとして捉える必要がある。このことを実感しているからこそ、これから業界で活躍する皆さんに、まずは今地球規模で起きている現実に目を向けてもらおうと思います」

華やかなファッション業界ではあるものの、一方では世界第二の汚染産業と言われている現実。その実情とは。
「ファッション業界の水使用量は、サステナビリティを考える上での大きな課題となっています。たとえば、ジーンズ1本つくるのに必要な水の量はおよそ7500リットル。これは、人が7年かけて飲む水の量。コットン製のTシャツ1枚つくるのにも2700リットルの水が使われます。しかも、問題は地球の水資源を大量に消費するだけではなく、河川の水質汚染をも引き起こしている点。コットン製品に使われる綿花栽培に使用されるあらゆる薬剤、さらには衣類の染色と仕上げの工程で生じる廃水がその土地の水源を汚染しているのです。その他にも、大量消費、大量廃棄による環境負荷、児童労働や低賃金等の非人道的な労働環境など、業界の裏では、あらゆる問題が起きているのです」

課題解決を新たな一歩にし躍進を続ける企業が続々と登場

次々に語られる、業界の影の部分。こうした現実に目を向け、当事者意識を持ちながら、ビジネスにつなげて業界をさらに進化させることが、ファッション業界に関わる自分たちの使命。そんな当社の思いと重なるように、近年では、新たな行動を起こし始めた企業も次々に登場。
「海外では、女優のエマ・ワトソンを取締役に置き、業界のオピニオンリーダー的存在でもあるケリング社。ファッションの世界を飛び出し、食品業界でも事業を展開するパタゴニアは業界の風雲児として、いち早くサステナビリティな取り組みに着手しています。一方、国内に目を向けると、山形県に本社を置くスパイバー社は石油資源に頼らず、動物倫理の心配もない植物由来の原料で素材を作るサステナブル素材の革新企業として躍進。日本の繊維企業とパートナーシップを組み、環境負荷の少ない衣服の提供に貢献しています。その他、社会貢献を主軸にしたアルパカ製品のエキスパートとして知られるザ・イノウエブラザーズやリネンの可能性を追求し、当社のサイトでも紹介しているヴラスヴラムの井上智さん、世界で活躍する若手デザイナー中里唯馬さんなど、あらゆる企業、ブランド、個人がそれぞれの視点でファッション業界が持つ課題に向き合い、ビジネスにつなげています」

モノの循環に着目した「BRING」の新たな取り組み

課題解決+ビジネス+継続性。そこに、業界内外とのつながりを加えることでファッション業界はさらに躍進するというのが私たち、ザ・ゴールの考え。それを実現している企業の事例として、講義の後半では「服から服をつくる」をコンセプトに、サーキュラー・エコノミーサービス「BRING」を展開する日本環境設計(株)の沖田様が登壇。
「環境負荷が高いにも関わらず、世界中で年間に捨てられる洋服の量はなんと9200万トンあまり。大量生産による売れ残りと併せて、消費者が着なくなった服がそのまま捨てられていく現状をなんとか変えようとしたのが、古着から再生したポリエステルを用いた製品販売を行う新たな衣料リサイクルのプラットフォーム『BRING』のはじまりです」
一般的な再生ポリエステルはペットボトルを原料にしたもの。同社では、技術を進化させ、これまでのリサイクル手法に加え、ゴミの更なる削減にも寄与できるケミカルリサイクルを利用しているのが特徴。「ペットボトルを原料にした一般的なマテリアルリサイクルでは、色を完全に脱色することが難しいため、一度しかリサイクルできない点が課題でした。そこで、同社のケミカルリサイクル技術では、回収した廃棄衣料を化学的に分解し、溶け出したポリエステルを分子レベルで脱色。これにより、透明なポリエステル樹脂を作ることができ、繰り返しリサイクルすることを可能にしたのです」
繊維生産量の約6割にあたる約5200万トンを占めると言われているポリエステル。環境負荷が高く、地下資源の奪い合いで紛争の火種にもなるポリエステルを再生ポリエステルに変えることで、繊維自体をサステナブルなものにするのがBRINGの目的。そこで、注目を集めるのが他社のブランドと提携した服の回収プログラム。
「現在、弊社と提携して服の回収に取り組むブランドの数は約100。地方の小さなブランドから、『無印良品』のような大きなブランドまで幅広く参加、認知は確実に拡大しています」

BRINGが支持されている理由はサステナブルという点だけではなく、品質の良さは当たり前に、機能性やデザイン性も優れています。会場では実際に作られた生地が配られ、その質感を学生の皆さんにも確かめてもらいました。「ポリエステルというと、スポーツアパレルで見られるような軽く光沢感のある素材を思い浮かべると思います。けれど、どうですか? コットンっぽいと思いませんか? コットンのような温かみを感じる風合いへのこだわりも私たちが大切にしていることなんです。サステナブルだからという理由だけでは購買動機にはつながりません。ファッションとして、お洒落に楽しめるものであることが第一。理想は、手にとったものが結果、サステナブルなものだったという流れです。自分がいいなと思った洋服が実は、生産過程にもこだわったものだったら嬉しいですよね。その発見を楽しんでもらおうと、商品にはどうやって作られたものか分かるように循環構造を描いたタグを付けています。モノを選ぶときに、服作りの過程にも興味を持ってもらう。そんな意識の変化を持っていただけることが私たちの目標でもあるんです」
購入者の意識の変化を促すには、ファッションに関わるすべての人々の意識の変化が必要。そのことにあらためて気づかされた今回の講義。国連主導のプロジェクトでもあるSDGsは、今が行動の10年と言われています。いかに地球環境を守り、すべての人の人権を尊重しながら、経済を成長させていくか。そして、その歩みに誰一人として取り残さずに持続させることがSDGsの目標でもあります。他人事としてではなく、自分事として捉える。そうすれば、ファッション業界も地球も明るい未来が待っている。そんな思いを多くの学生と共有した、貴重なひとときとなりました。

【東京モード学園】新宿駅前、徒歩3分。東京モード学園はファッション・デザイン・ビジネスからインテリア、グラフィック、美容業界まで、ひとり1人の個性を見つけ伸ばし、即戦力となるプロを育成する専門学校です。学生の希望する業界のプロへと導く業界直結のカリキュラムで、14年連続※希望者就職率100%を達成。「就職」と「美容師の国家資格」を保証する2大保証制度『完全就職保証制度』『国家資格 合格保証制度』は自信の証明です。(※2007年度以降の実績)

東京モード学園

【日本環境設計株式会社】「あらゆるものを循環させる」をビジョンに、日本環境設計は創業よりサステナブルなサプライチェーンの構築に取り組んでいます。リサイクルプラットフォームとアパレルブランドの機能をもつ「BRING」では、服の回収から独自のケミカルリサイクル技術「BRING Technology™」によりリサイクル、そして再生素材を用いた洋服の販売までを手掛けることで「服から服をつくる」を実現しています。

日本環境設計株式会社

BRING